BTSの「Butter」、Beyoncéの「TEXAS HOLD ‘EM」を手がけたプロデューサーに学ぶ、Pro Tools実践テクニック

実際のAvid Pro Toolsの編集ウィンドウキャプチャを背景にした、Pro Toolsで学ぶヒットメーカーの制作術のアイキャッチ画像 DAW制作テクニック集
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DTMを続けていると、つい「もっといいプラグインがあれば」「もっと高性能な音源があれば」と機材に目が行きがちです。しかし、世界的ヒット曲を手がけたプロデューサーたちのセッションを覗いてみると、彼らが頼っているのはむしろ「引き算」や「素材をどう自分のものにするか」という、ソフトの機能そのものよりも一歩手前にある考え方だったりします。

今回は、Splice(海外の大手サンプル素材サービス)がPro Toolsとの連携機能ローンチを記念して公開した2本の企画動画から、実際に手を動かしながら制作しているプロデューサー2人のテクニックを紹介します。どちらも「Pro Toolsのここを押せばこうなる」という操作解説ではなく、ヒットメーカーが素材やアイデアをどう料理しているかという、クリエーター目線のノウハウです。

※出典はいずれも英語記事・動画です。ブラウザの自動翻訳機能を使うと内容を追いやすくなります。

Rob Grimaldi(BTS「Butter」、BLACKPINK「Love to Hate Me」)—「引き算」でK-POPサウンドを作る

Rob Grimaldiは、BTSの大ヒット曲「Butter」やBLACKPINK「Love to Hate Me」、Martin Garrixなど数多くのアーティストを手がけてきたプロデューサーです。Splice公式ブログのインタビューでは、彼が実際にK-POP楽曲のインストトラックをPro Tools上で組み立てていく様子が公開されています。

Rob Grimaldi (BTS, BLACKPINK) Shares His K-Pop Production Tips – Splice Blog

※引用元では制作の全工程を追った別バージョンの動画も公開されています。

素材は「気に入っても、そのままでは使わない」

Grimaldiのスタンスとして特徴的なのが、Splice(サンプル素材)から気に入ったループを持ってきても、そのまま使うことはほとんどないという点です。本人いわく、ループを「自分のものだと感じられるまで」作り込む時間をかなり取っているとのこと。

これは初心者ほど陥りやすい「良い素材=完成された音」という思い込みへの反例です。ループはあくまで出発点であり、そこからどれだけ手を加えられるかがプロとアマチュアの分かれ目、という視点は、ソフト音源やサンプルパックを多用するDTMerにとって参考になる考え方でしょう。

あえてハイハットを抜く「引き算アレンジ」

具体的な手順として動画内で紹介されているのが、ドラムループからハイハットだけを丸ごと削除するテクニックです。Grimaldiは「このループはすごく気に入っているけど、他のアレンジと馴染ませるには単純化する必要があった」と説明しています。ループをフルで鳴らすのではなく、既存の要素と衝突するパートを思い切って間引くことで、トラック全体のバランスを整える。この「全部盛りにしない」判断が、彼のサウンドが常に「大きく、太く」聞こえる理由の一つだと記事は指摘しています。

再現するなら、Pro Toolsに限らずどのDAWでも:

  1. ループをオーディオトラックに読み込む
  2. Strip Silence機能やトランジェント分割で不要な要素(ハイハットなど)を選択
  3. 該当リージョンを削除、もしくはミュートしてアレンジと馴染むか確認

という流れで試せます。

リード音を「聞こえる」場所に押し上げる

もう一つのテクニックが、シンセリードのピッチを高い帯域にシフトして、他の要素の中に埋もれないようにする処理です。そこにディストーションで色付けをし、さらに元のリードだけでは足りない部分を別サンプルで補強していきます。

「聞こえる」のではなく「感じる」レイヤーを足す

特に興味深いのが、最後の仕上げとして自分の声でメロディを歌った素朴な録音を、リード音の4層目として重ねている点です。単体で聞くとエフェクトなしの生々しい声ですが、他の3層と混ぜると「聞こえる」というより「感じる」ような厚みが生まれるとGrimaldiは語っています。彼自身「エフェクトなしで自分の声を聞き返すと、単体では正直笑ってしまう」としながらも、ミックスの中に忍ばせることで独特の質感になる、というのがポイントです。

これはボーカルシンセやコーラス素材に頼りがちなDTMerにとって、「聞こえないレイヤー」の効果を再認識させてくれるテクニックです。人の声でなくても、原音を目立たせずにブレンドする層を1つ足してみる、という応用ができそうです。

Killah B(Beyoncé「TEXAS HOLD ‘EM」、Ariana Grande「Positions」)— サンプルは「絶対に分解する」

もう一人は、Beyoncéの「TEXAS HOLD ‘EM」を共同プロデュース・作詞し、グラミー賞にもノミネートされたKillah B。Ariana Grandeの「Positions」なども手がけた実力派です。Splice公式ブログでは、彼に「制作課題カード」を引かせて制限時間内に音を作らせるポーカー形式の企画動画が公開されており、そのやり取りの中で普段の制作アプローチが語られています。

Killah B Plays Texas Hold ‘Em With Samples – Splice Blog

ループは「そのまま使うのが嫌い」

Killah Bが繰り返し語っているのが、素材を「完全にコントロールしたい」という姿勢です。本人の言葉を借りると「ループをもらっても、そのまま使うのは好きじゃない。全部の音を分解して、キックの鳴り方を変えたり、スネアを丸ごと差し替えたりする」とのこと。

これはGrimaldiの「作り込む」姿勢とも共通しますが、Killah Bの場合はさらに踏み込んで、ループを構成音ごとに完全に解体するアプローチを取っています。

再現するなら:

  1. ループ素材をトラックに配置
  2. Pro ToolsであればBeat Detective、他のDAWでもトランジェント検出機能でキック・スネア・ハイハットなど個別の要素を抽出
  3. それぞれを別トラックに分離し、個別に音色や配置を差し替える

という手順がベースになります。「ループをそのまま貼って終わり」にせず、必ず一度バラしてから再構築するという工程を制作フローに組み込む価値がありそうです。

制限時間の中で「使えるアイデア」を出す訓練

余談ですが、この企画自体もDTMer的には示唆に富んでいます。カードごとに「賤けられる制作時間」が決まっており、限られた時間の中でアイデアを形にする様子が収録されています。時間を区切って強制的にアウトプットを出す「タイムボックス制作」は、完璧主義で手が止まりがちな人におすすめの練習法です。

まとめ:機材より先に、素材への向き合い方を変える

今回紹介した2人に共通するのは、「良い素材=完成品」ではなく「良い素材=自分色に染めるための材料」という捉え方です。

  • Grimaldi:引き算でアレンジを整理し、聞こえないレイヤーで質感を足す
  • Killah B:ループを一度完全に分解してから、自分の意図で再構築する

どちらもPro Tools固有の機能というより、どのDAW(Logic、Cubase、FL Studioなど)でも今日から試せる考え方です。手元のサンプルパックを「そのまま使う」のをやめて、一度バラしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。


関連情報

Pro Tools(Avid)

公式サイト:Pro Tools公式サイト

価格:サブスクリプション制。年額プラン・月額プランあり(詳細は公式サイトの価格ページを参照)

Splice(サンプル素材・DAW連携サービス)

公式サイト:Splice公式サイト

価格:Creatorプランなどサブスクリプション制(詳細は公式サイトを参照)

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