サンプル音源にはできない、Pianoteqだけの音作り ― 元業界人が明かす”生っぽさ”の作り方

Pianoteq公式のVoicing & Designパラメーター画面を背景に、物理モデリングでピアノの音を作り込むテクニックを紹介する記事のアイキャッチ画像 ソフト音源使用術
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※本記事は海外の記事・フォーラム投稿を基に、DTMerに役立つ視点を加えて日本語で解説しています。引用元は英語ですが、自動翻訳機能でも十分内容を追えます。

Ivory、Keyscape……。ピアノ音源といえば「録音されたサンプルをどれだけリアルに鳴らすか」の勝負、というイメージが強いのではないだろうか。

だが、Modartt社のPianoteqは根本的にアプローチが違う。サンプルを一切使わず、弦・ハンマー・響板の物理的な振る舞いを計算で再現する「物理モデリング」方式の音源だ。この方式ならではの強みは、サンプル音源では絶対にできない”音の設計”が可能という点にある。

今回は、30年以上キーボード業界に携わり著書『Keyboard for Dummies』もあるジャズピアニスト、Jerry Kovarsky氏によるPianoteqレビュー記事と、実際のピアノ調律経験を持つユーザーがModarttの公式フォーラムに投稿した独自の音作り手法という、2つのソースを組み合わせて紹介する。

サンプル音源とモデリング音源、何が違うのか

サンプル音源(Ivory・Keyscapeなど)は、実機を録音した「静止画」を鍵盤の強さに応じて切り替えて鳴らす仕組みだ。リアルではあるが、録音された音そのものを変形させるには限界がある。

一方Pianoteqは、ハンマーの硬さ・弦の長さ・響板の特性といった「ピアノを構成する物理パラメーター」そのものを直接いじれる。Kovarsky氏はレビューの中で、これを「静的な録音プロセスでは不可能な形で、ユーザーが音と反応の仕方を作り変えられる」設計だと評している。データ量も40MB程度と極めて軽量で、サンプル音源のような数十GBのダウンロードも不要だ。

テクニック1:Unison Width(ユニゾン幅)で”艶”を作る

Kovarsky氏が特に効果的だと挙げているのがUnison Widthというパラメーターだ。

実物のピアノは、1つの音に対して2〜3本の弦が張られており、これらはピアノ調律師の視点から見ると本来「完全に同じ音程」ではなく、わずかにズレがある。このズレが音に独特の揺らぎと響きを与えている。

Pianoteqの Unison Width は、このズレの量を直接コントロールできるパラメーターだ。Kovarsky氏は「調律師からすれば異端かもしれないが」と前置きしつつ、少しだけこの値を上げることで音に色気とサステインが加わり、心地よく感じたと述べている。極端に上げるとハニートンク(パブピアノ)のようなデチューン感の強い音にもなる。

実践のヒント:デフォルト設定のまま使わず、Unison Widthを少しだけ上げてみるだけで、他のピアノ音源にはない独特の”揺れ”のある音が作れる。バラードなど、ピアノの響きそのものを聴かせたい曲で特に効果的だ。

テクニック2:Hammer Hardness(ハンマー硬度)を強弱別に作り分ける

もう1つの主要パラメーターがHammer Hardnessだ。ハンマーのフェルトが硬いほど音は明るく金属的になり、柔らかいほど丸く落ち着いた音になる。

重要なのは、Pianoteqではこの値を弱打(Piano)・中間・強打(Forte)というvelocity帯ごとに個別調整できる点だ。つまり「弱く弾いたときは柔らかい音、強く弾いたときは硬く輝く音」というように、実際のピアニストが無意識に行っている打鍵の強弱による音色変化を、音源側の設計として作り込める。

Pro版ではさらに1音1音ごとに個別調整も可能で、Kovarsky氏はこれを指して「サンプル音源にはない精密なコントロール」と評価している。

テクニック3(応用):”使い込まれたピアノ”を疑似再現するエイジング手法

ここからは、実際にピアノ調律の経験を持つユーザーがModarttの公式フォーラムに投稿した、より踏み込んだ活用法を紹介する。投稿者は、自身で長年ピアノの調律をしてきた経験をもとに、Pianoteqで「使い込まれた実機のクセ」を意図的に作り込む手順を公開している。

具体的な手順は以下の通りだ。

  1. 中音域(3〜4オクターブ分のグランドスタッフ)だけ Hammer Hardness をわずかに上げる——実際のピアノは、最もよく弾かれる中音域のハンマーフェルトが弾き込まれて硬くなっていくため、その状態を再現する
  2. 同じ中音域を、気づかない程度にわずかにデチューンし、さらにランダマイズする——完全に均一なピッチではなく、実機特有の微妙なバラつきを加える
  3. 低音域のダンピング(減衰)時間を伸ばす——低音の弦は質量が大きく、実際には振動が止まるまでに時間がかかる。この物理的な特性を強調する
  4. アクションノイズ(鍵盤機構の動作音)をわずかに増やし、ランダマイズする——これも耳にはっきり聴こえるレベルではなく、「弾き込まれた楽器の気配」を感じさせる程度に留めるのがポイント

投稿者はこれを「Condition(コンディション)スライダーで用意されている既製の”経年変化”に頼るのではなく、自分自身の経験に基づいた”エイジング”を作る」行為だと説明している。派手な効果ではなく、あくまで無意識レベルで「本物っぽさ」を底上げする、職人的なアプローチだ。

実践のヒント:どのパラメーターも「気づかれない程度」に留めるのがコツ。派手に振り切ると不自然になるため、まずは各パラメーターを小さく動かしながら耳で確認していくのがおすすめだ。

サンプル系とモデリング系、使い分けの指針

記事①で紹介したKeyscape/Ivoryの処理術は「録音された良い音を、ミックスに馴染ませる」ためのテクニックだった。対してPianoteqのアプローチは「音そのものを設計する」テクニックであり、ゼロから理想のピアノを組み上げる自由度が魅力だ。

  • 生々しい録音のニュアンスをそのまま活かしたい → サンプル系(Ivory/Keyscape)
  • 自分だけのオリジナルな音色を一から作り込みたい、CPU負荷や容量を抑えたい → モデリング系(Pianoteq)

両者は対立するものではなく、曲によって使い分けるのが現実的だろう。


紹介したソフト・製品情報

  • Modartt Pianoteq(公式サイト:modartt.com/pianoteq) ※Stage/Standard/PROの3グレード展開、価格はグレードにより異なる

出典:
Jerry Kovarsky, “Software Piano Review: Pianoteq 6.3“, Piano Buyer
Modartt公式フォーラム, “Hammers hardness setting physical mean

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