Billie Eilishの「What Was I Made For?」(映画『バービー』挿入歌、2024年アカデミー賞主題歌賞受賞)は、書き上がるまでわずか30分ほどだったとFINNEASは語っています。しかし完成したトラックを聴くと、その”シンプルさ”の裏に驚くほど緻密な音作りが仕込まれていることがわかります。Varietyの企画「Behind The Song」でFINNEASがLogic Proのセッションを開きながら解説した内容をもとに、Logic Proユーザーが今日から真似できる要素を整理してご紹介します。
元ネタとなったVariety「Behind The Song」本編の映像はこちらです。FINNEASが実際にLogic Proの画面を開きながら解説しています。
“生っぽさ”の正体はピアノの弾き方ではなく「録り方」にあった
使われているピアノは、アコースティックのアップライトピアノに「フェルトペダル(ソフトペダル)」を踏んだ状態で録音したものです。ハンマーの音がわずかに丸くなり、あのくぐもった質感が生まれています。ポイントは、ピアノのハンマー(打鍵)そのものを捉えるマイクと、部屋の響きを拾うルームマイクを”別トラック”として分けて録っていること。
Logic Proでこの質感に近づけるなら、ソフト音源のアップライトピアノを使う場合でも一手間加えるのがおすすめです。
- Logic純正の「Space Designer」でルーム系のIR(インパルスレスポンス)を軽く薄くかけたトラックを”別バス”として作り、ドライのピアノとブレンドする
- ドライ側は高域を少し削って(EQのシェルフで2〜3kHz以上を-2dB程度)”フェルトを踏んだ”ような丸さを演出
- ルーム側の音量は控えめに(-15dB前後)。あくまで背景の空気感を足す程度に留めるのがコツ
ヴォーカルは「気づかれない」ように積む
ヴォーカルはダブルトラッキング(2回録りを重ねる)された上で、左右にハードパンされている箇所があります。さらに非常に音量の小さいハーモニーが隠されており、これが効いているのに気づかれない程度に混ぜてあります。
FINNEAS本人は、リスナーが仕掛けに”気づいて”しまったら失敗で、ただ自然に”感じている”だけなら成功だと語っています。
Logic Proでこれを再現するなら、メインヴォーカルの下に「サブハーモニートラック」を1〜2本追加し、フェーダーを-20dB前後まで絞った上でPanを左右に振り切るのがおすすめです。ミュートしても違和感がないくらいの音量に留めるのが肝で、”聴こえるか聴こえないか”のラインを狙うのがポイントです。
“壊れたおもちゃ”のような装飾音は、約のローファイプラグイン1本から
ヴォーカルに時折追従する、壊れたおもちゃのようなメロディックな”blip”音があります。これはAberrant DSP社の「SketchCassette」というローファイ系プラグイン(1本約$30、手描き風のUIが特徴)で作られています。4トラックカセットレコーダーのヨレやテープ特有のワウ・フラッターを再現するプラグインで、「サブトルな揺らぎ」から「原形を留めないほどの破壊」まで幅広く対応します。
SketchCassetteを持っていなくても、Logic純正プラグインだけでこの質感には近づけます。
- 短いメロディフレーズをBounce In Placeでオーディオ化する
- 「Tape Delay」で軽くワウ・フラッター的な揺れを加える(Rate/Feedbackを低めに)
- さらに「Bitcrusher」でサンプルレートを軽く落とし(48kHzから22kHz程度)、デジタルの粗さを混ぜる
- 最後にハイパスフィルターで低域を削り、オケの中で”浮く”位置に配置する
これにより、専用プラグインがなくても”チープな質感の装飾音”という考え方自体は再現可能です。
削ぎ落とされているようで、実は詰め込まれている
ミックスにはメロトロンのパートや、共同プロデューサーであるMark Ronsonが加えた4トラック、強めに加工されたアドリブヴォーカル、そして「impact notes」とFINNEASが呼ぶごく控えめなパーカッションも含まれています。一聴するとスカスカに聴こえるアレンジの中に、実際には細部が詰め込まれている——これがFINNEASのミックス哲学だと言えそうです。
公式情報
SketchCassette(Aberrant DSP):価格は約$30。プラグイン本体の紹介記事はMusicRadarの記事内でも触れられています。公式ストアのURLは変更される可能性があるため、掲載前に改めてご確認ください。
Logic Pro(Apple):Mac App Storeで販売中。価格は公式サイトでご確認ください。



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