MODO Bassは「弾く」んじゃなく「調律」する。海外ベテラン講師が明かす、打ち込みベースを”生”に近づける4つの調整術

MODO Bassの使用術を紹介する記事のアイキャッチ画像。「MODO Bassは「弾く」んじゃなく「調律」する」というキャッチコピーとMODO Bass 2のインターフェース画像。 ソフト音源使用術
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IK MultimediaのMODO Bassは、サンプリングを一切使わず物理モデリングだけでベースの音を生成するという、発売当初から異彩を放つ音源です。弦・ネック・ボディ・ピックアップまで、ベースという楽器を構成する要素をほぼすべてパラメータとして操作できてしまいます。

裏を返せば、「情報量が多すぎて、プリセットのまま使って終わってしまう」人が非常に多い音源でもあります。実際、公式サイトでも無料版のMODO BASS CSが用意されていて、まずは”P-Bassが1本入っただけの手軽な音源”として触られることが多いようです。

そんなMODO Bassを「プリセットの先」まで踏み込んで使い倒しているのが、音楽テクノロジー分野で長年執筆・教育を行ってきたベテラン、Craig Anderton氏です(英語サイト・自動翻訳での閲覧可)。彼が自身のブログで公開している記事には、「モデリング音源をいかに人間らしく鳴らすか」という一貫した視点のもと、今日から使える具体的な設定値がいくつも並んでいます。今回はその内容を、日本語話者のDTMerにも実践しやすい形でご紹介します。

① 音符を”詰めすぎない”だけでリアリズムが変わる

まず前提として押さえておきたいのが、打ち込みベースが不自然に聞こえる最大の原因は「音と音の間に隙間がない」ことだという指摘です。

実際のベース演奏では、指を弾く位置まで移動させてから弦を弾くという動作が必ず発生するため、どんなに速いフレーズでもノートとノートの間にはわずかな”間”が生まれます。ところが打ち込みでベースラインを作ると、このわずかな間を無意識に埋めてしまいがちです。

具体的な手順はシンプルです。

  1. 打ち込んだベースパートのピアノロールを見返す
  2. 前の音符が次の音符の頭にかぶっている(オーバーラップしている)箇所を探す
  3. かぶっている音符のノート長を、次の音符が始まる直前まで短く詰める

これだけで、フレーズ全体の生々しさが変わってきます。地味な調整ですが、MODO Bassに限らずどんな打ち込みベースにも応用できる、汎用性の高いテクニックです。

② あえて「弾いていない音」を作る──キーボードベースの逆転の発想

2つ目は、MODO Bassの強みである”リアリズム”を、あえて手放す使い方です。

Craig Anderton氏はギタリスト・ベーシストとしての経験を持ちながらも、鍵盤でベースパートを打ち込む「キーボードベース」を好むことが多いと述べています。理由は、生演奏特有のノイズや揺らぎを排除した”理想化されたベース音”を作りたいからだそうです。CGのキャラクターと実写の人間くらい、質感が違うというたとえは分かりやすいのではないでしょうか。

MODO Bassでこの”理想化”を作るための設定は、次の2箇所です。

  • Play Styleタブ:Detach NoiseとSlide Noiseを両方とも「0.0」に設定
  • Stringsタブ:Actionを「High」、Gaugeを「Heavy」に設定(ビビり音・フレット鳴りを排除)

たとえばRickenbacker系のモデルは本来スライドノイズやビビり音が”味”として出るよう設計されていますが、この設定を入れることで、リッケンバッカーとシンセベースの中間のような、癖のないクリーンな質感に変えられます。EDMやシンセポップ寄りの制作で、生っぽさより粒立ちの良さを優先したいときに使えるアプローチです。

③ MIDIベロシティを”底上げ”して、タッチのムラを均す

3つ目は、プロとアマチュアの差を分ける要素として挙げられている「タッチ」の作り込みです。

MODO Bassは実弦を持たないものの、MIDIベロシティに対して非常に細かく反応するよう設計されています。Play Styleタブにあるタッチ関連のパラメータに加えて、システム設定内のVelocity Curve(ベロシティカーブ)を自分の打ち込み傾向に合わせて調整することが推奨されています。

ここで紹介されている裏技が、「打ち込んだMIDIノートのベロシティ値全体に、一律で数値を加算する」という方法です。

  • ベロシティのバラつきをコンプレッサーで均そうとすると、音自体が団子になり弦ごとのトーンの一貫性が崩れやすい
  • それよりも、DAWのMIDIエディット機能でベロシティ値そのものに一定値(例:+25)を加算する方が、音の芯を保ったまま粒を均一に近づけられる
  • 上限の127を超える値は自動的にクリップされるため、低い打鍵の底上げだけが起こり、結果的に「リミッティング」に近い効果が得られる

Logic ProのMIDIトランスフォーム、Cubaseのロジカルエディター、Studio Oneのイベントエディターなど、主要DAWにはベロシティを一括加算する機能が用意されています。ミックス前の打ち込み段階でタッチを整えておく、という発想の転換が今回のポイントです。

④ 2種類の”スライド”を使い分ける

最後は、ベースならではの表現であるスライドの作り方です。MODO Bassには性質の異なる2つの実装方法が用意されています。

ピッチベンドホイールによるスライド

  • Controlページの「Slide Range」ノブで最大幅を設定(Anderton氏は12半音を推奨)
  • 半音単位にクオンタイズされ、フレットを滑るような自然な質感が自動で付く
  • 下方向のスライドは、演奏しているポジションより下(=ナットの位置)を超えられないという、実楽器と同じ制約がある

レガート・スライド

  • ControlページでキースイッチかMIDIコントローラーをトリガーとして設定
  • 前の音を保持したまま新しい音を弾く(レガート奏法)と、その音までスライドしてつながる
  • スライドの速度は弾いた強さ(ベロシティ)に比例する
  • 上行方向のみ機能し、下行スライドには使えない
  • ピッチベンドホイールよりも、狙った着地音を正確に当てやすいという利点がある

使い分けの目安として、Slide Rangeを2半音程度の狭い範囲に設定しておき、大きく跳躍するスライドはレガート・スライドに任せる、という組み合わせ方が紹介されています。両方の特性を理解した上で使い分けることで、表現の幅がぐっと広がります。


まとめ:MODO Bassは「弾く」より「調律する」音源

今回紹介した4つのテクニックに共通しているのは、MODO Bassを”リアルなベースの再現”としてだけでなく、”パラメータで人間らしさを設計できる楽器”として捉えている点です。プリセットのまま鳴らして終わるのではなく、ノート長・電気系パラメータ・MIDIベロシティ・スライド方式という4つの軸を自分の曲に合わせて微調整する。この積み重ねが、打ち込みベースの説得力を大きく左右します。

IK Multimedia公式のMODO BASS 2紹介動画。基本機能の全体像を掴みたい方はこちらもあわせてどうぞ。

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