Billie Eilishの実兄であり、彼女のほぼ全楽曲を手がけるプロデューサー・ソングライター、Finneas O’Connell。彼らの1stアルバム『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』は、両親の家の一室、いわゆる”ベッドルームスタジオ”だけで制作され、全米・全英チャート1位、グラミー主要4部門を含む複数受賞という前例のない結果を残しました。
高価なスタジオも大人数のチームも使わず、Logic Proと数本のプラグインだけでここまでの音を作れる ── それがFinneasが今もDTMerから注目され続ける理由です。今回はPensado’s Placeでのインタビューや本人のツイート、Sound On Soundの取材記事などから、彼が実際にどんなプラグインを使っているのかを掘り下げます。※引用元は英語記事のため、必要に応じてブラウザの自動翻訳機能をご利用ください。
“最小限の道具でどこまでやれるか”という哲学
FinneasはPensado’s Placeのインタビューで、自身の制作環境についてこう語っています。デビュー曲「Ocean Eyes」の音はすべてLogic純正のストック音源で、そこにEQをかけてレイヤーしただけだったと明かしています。今でこそプラグインは増えたものの、根底にあるのは「ミニマリスト」という姿勢。プラグインの物量で音を作るのではなく、少ない手数で最大限の効果を引き出す発想がFinneasサウンドの核になっています。
これはDTMerにとって非常に実践的な示唆です。「有名アーティストは特別な機材を使っている」という思い込みを捨て、手持ちのプラグインをどこまで使い倒せるかという視点に変えるだけで、制作の突破口になることがあります。
ソフト音源:Omnisphere・Keyscape・Trilianの”御三家”
Finneas本人が「アルバムで最もよく使った3本」と名言しているのが、Spectrasonicsの看板ソフト音源トリオです。
Omnisphere —— シンセサウンド全般
Keyscape —— 生ピアノ〜エレピ系。「これについてはいくら語っても足りない」と絶賛
Trilian —— ベース音源
さらにAIR Music TechnologyのHybrid 3・Loom、Output Substance(ベース)、そして「ほぼ全曲で使う」というAnalog Stringsも制作の定番として挙げられています。808系のトラックメイクではInitial Audioの「808 Studio II」をツイートで公言しており、ポップスにおける低音設計でも既製ソフト音源を巧みに組み合わせるスタイルが見て取れます。
ボーカル加工の要:Soundtoys Little AlterBoy
Billie Eilishの代表曲「bad guy」の、あの特徴的な低くひしゃげたボーカルエフェクト。これを作っているのがSoundtoys Little AlterBoyです。Soundtoys公式もPensado’s PlaceでのFinneasの解説動画を引用し、「bad guyのボーカルエフェクトをどう作ったか」を紹介しています。
Little AlterBoyはピッチシフト・フォルマントシフト(声の性別感を変える)・ロボットボイス化までを1つのインターフェースで完結できるプラグインです。Finneasはこれを使って、Billieの地声とはまったく異なるキャラクターのボーカルレイヤーを作り出し、楽曲に”もう一人のBillie”を登場させています。
このほかボーカルチェーンには、Logic純正のコンプレッサー・Vocal Transformer・ピッチ補正・Sample Delay、Antares Harmony Engine(ハーモニー生成)も組み込まれていることが、Sound On Soundの取材で明らかになっています。
空間系:Valhalla DSPの3兄弟
リバーブにはValhalla Room / Valhalla Plate / Valhalla Vintage Verb(Silver)を使い分け、ディレイにはLogic純正のStereo Delayを活用。特徴的なのが、Sample Delayを使ってチャンネルを分割し、片方にわずかなレイテンシーを作ることで「両耳から聴こえているような」擬似ステレオ感を作るテクニックです。これは高価な専用プラグインがなくても再現できる、DTMerにすぐに応用できる手法と言えます。
その他の定番:Auto-Tune Realtime・RC-20 Retro Color・Sketch Cassette
Antares Auto-Tune Realtime —— ボーカル補正だけでなく、レイテンシーゼロを活かしてシンセパートの音程加工にも使う”クリエイティブツール”として活用
XLN Audio / iZotope RC-20 Retro Color —— グラニュラー処理とヴァイナルノイズのエミュレートで、質感を一気にローファイに寄せる
Sketch Cassette —— 自身のボーカルにカセットテープ的な質感を足す際に使用
まとめ:高級機材より”耳と手癒”
FinneasのセットアップはLogic Pro・数本のソフト音源・Soundtoys・Valhalla DSPという、DTMerなら十分に手が届く構成です。それでいて世界的ヒットを生み出せているのは、プラグインの豪華さではなく「同じ数本のツールを何百回も使い込んで、自分の手癖にする」という反復にあります。今日紹介したプラグインの中に、すでに自分のDAWに入っているものがあれば、まずはそれをFinneas風に”使い倒す”ところから始めてみるのも面白いはずです。
公式情報
Soundtoys Little AlterBoy (約$99)
Spectrasonics Omnisphere 2(約$499)
Spectrasonics Keyscape(約$399)
Spectrasonics Trilian(約$399)
Valhalla DSP(Room・Plate・VintageVerb、各$50)



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