「プラグインには魂がある」― The Midnightが明かす、レトロウェイヴを支える機材哲学

The Midnightが使用するSerum・Zebra2・UDO Super6を紹介する記事のアイキャッチ画像 著名アーティストの使用プラグイン情報
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The Midnightとは

The Midnightは、Tyler Lyle(作詞・作曲担当)とTim McEwan(プロデュース・サウンドメイキング担当)の2人からなるレトロウェイヴ/シンセウェイヴ・デュオです。2014年のデビュー作『Days of Thunder』以来、80年代の映画音楽やシンセポップを思わせるノスタルジックなサウンドと、そこに宿るSF的・映画的な世界観で人気を集めてきました。

2018年『Kids』、2020年『Monsters』、2022年『Heroes』という3作は「人がどうやって人になるか」という一つの物語を描いた三部作で、2人はこれを冗談交じりに「自分たちのMCU(Midnight Cinematic Universe)」と呼んでいます。2025年11月にリリースされた最新作『Syndicate』は、地球がすでに滅び、宇宙を漂う一つの通信電波だけが残っているという設定のコンセプトアルバムです。

今回参考にしたのは、音楽メディアMusicTechに掲載されたインタビュー記事です。プロデューサーのTim McEwanが、シンセの使い分け方から具体的なミックス手法まで、かなり突っ込んだ話をしています。

一つのパートに、あえて複数のシンセを重ねる

McEwanのサウンドメイキングの核にあるのが「一つの要素を複数のシンセ・プラグインに分担させる」という考え方です。彼はMoogのSub 37、Yamaha DX7、Xfer Records「Serum」、Oberheim OB-X8、UDOのSuper 6、そしてu-heの「Zebra 2」といった新旧のシンセを組み合わせて音を作っています。

理由をこう説明しています。理屈の上では同じ波形のはずでも、ミックスの中での馴染み方はシンセごとに全然違う。だからこそ一つの音色を複数のプラグインに分散させることで、色の幅を最大限に活かせるし、統合もしやすくなる、と。「すべてのプラグインには、すべてのシンセには、それぞれ固有の魂がある。固有の視点や色、音がある。だからこそ、それぞれが得意なことを活かすんだ」という言葉が印象的です。

一方で、この手法にこだわりすぎているわけでもありません。ループ素材を使うか自分で弾くか、その都度で判断が変わるかどうか。時間短縮になるならループも普通に使う、限界を決めずに一番良い結果を選ぶという柔軟な姿勢がうかがえます。

なお、ここで登場するu-he「Zebra 2」は、単純な減算合成シンセではなく、ウェーブテーブル・FM・コムフィルターなど複数の合成方式を自由に組み合わせられる、いわば「ワイヤレス・モジュラー」型のシンセです。モジュールを配線するように音を組み立てられるため、映画音楽の分野でも定番の存在として知られています。McEwanのようにレイヤーの一部として使うだけでなく、じっくりパッチを組んでオリジナルの音色を一から設計する使い方にも向いています。

「Chariot」のミックス:2つのシンセを重ねて接着する

アルバム収録曲「Chariot」では、ZebraのZebra 2とUDO Super 6という2台のシンセが楽曲の骨格を担っています。ベースと超音波的なスーパーソウ(super saw)はZebra、ブレイクドロップのざらついた低音パートはSuper 6という役割分担です。

面白いのは、Super 6で作ったパートをオーディオとしてバウンスした後、それを真似たバージョンをZebraでもう一度作って重ねているという点です。この“つなぎの素材”があることで、曲中で何度も切り替わる未来的なポップ・パートとブレイクビート・パートの間を、違和感なく行き来できるようにしているそうです。

16小節ごとに展開が変わる構成のため、予測できる部分と予測できない部分のバランスを取るのが難しいミックスだったとMcEwanは振り返っています。2番のバースで再びスーパーソウを持ってくることで馴染みのある要素を残しつつ、サビでドラムが抜けるタイミングでは大きなスウォッシュ音とリバーブを添えて、リスナーの意識を自然にそちらへ誘導しているとのことです。

「地球最後の放送」を再現するために新しく買ったプラグイン

『Syndicate』全体を貫くテーマは、地球が滅んだ後もなお宇宙を漂い続ける一つの通信電波というコンセプトです。この「ずっと昔に発信されたまま漂っている放送」というざらついた質感を出すために、共同プロデューサーのNest Acousticsはこのアルバムのためだけに新しくプラグインを購入したそうです。

具体的にはAberrant DSPの「Digitalis」をAudioThingの「Wires」に直列で通す組み合わせで、「このアルバムのために買ったんだけど、まさにぴったりだった」と語っています。Digitalisはビットクラッシュやピッチグリッチなど、デジタル的な劣化・崩壊を作り出すマルチエフェクト。Wiresは1970年代のソ連製ワイヤーレコーダーをモデリングしたエコー/ローファイ・プラグインで、テープとはまた違う独特のノイズ感・こもり感を持っています。この2つを重ねることで、「遠い過去から届いた通信」のような質感を作り出しているわけです。

この話がDTMerに刺さる理由

McEwanのインタビューを読んで感じたのは、機材の豪華さの話ではなく「何にこだわり、何にはこだわらないか」という判断軸の話として読めるという点です。整理すると3つの軸があります。

1つ目は、同じ役割の音を複数のシンセに分担させるという考え方です。理屈上は同じ波形でも、シンセが違えば倍音の出方やアナログ回路のクセ、内部処理のわずかな違いによってミックスでの馴染み方が変わります。ソフトシンセしか使えない環境でも、たとえばSerumで作った音とVital、あるいは別メーカーのシンセで作った似た音色を薄く重ね、パンやEQで棲み分けをつけてみると、単体では出せない厚みや立体感が出やすくなります。まずはベースやリードなど目立つパートで、レベルを7:3くらいの比率で混ぜて試すと違いを感じやすいはずです。

2つ目は、手法へのこだわりを持たない柔軟さです。ループを使うか手弾きするか、MIDIかオーディオか。The Midnightは常に「その曲にとって合理的な方」を選んでおり、自分の作業スタイルへのこだわりよりも曲の完成度を優先しています。

3つ目は、コンセプトから逆算してプラグインを新規購入する判断です。「なんとなく良さそうだから買う」のではなく、「このアルバムのこの質感を出すために、このプラグインが必要」という明確な逆算があるからこそ、買い切りのプラグインでも迷わず投資できる。DTMerが新しいプラグインを検討するときにも参考になる考え方です。

紹介した製品の公式情報

Xfer Records Serum 2

販売元:Rock oN Company

Rock oNで購入する

UDO Audio Super 6

販売元:Rock oN Company

Rock oNで購入する

参照元:Harry Levin, “How The Midnight build their own MCU with vintage synths and modern plugins,” MusicTech, November 25, 2025.(英語ソースには自動翻訳・要約を交えて紹介しています)

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