Dua Lipa「New Rules」「Don’t Start Now」、Selena Gomez、Justin Bieber、Jason Derulo ── 2010年代後半以降のポップスのヒット曲を陰で量産してきたのがIan Kirkpatrickです。
彼が面白いのは、DAWにSteinberg Cubaseを選び続けている理由を「アイデアのスピードに追いつけるDAWだから」と明言している点。プラグイン以前に、DAWの機能そのものを”作曲の道具”として使い倒す姿勢は、DTMerが今日から参考にできる視点です。この記事では、Cubaseの機能活用とボーカル処理の両面から、彼の制作手法を紹介します。
(参考:Steinberg公式「Steinberg Stories: Ian Kirkpatrick」、Sound On Sound「Inside Track: Dua Lipa ‘Don’t Start Now’」、MusicRadar「Ian Kirkpatrick on the importance of AutoTune」 ※すべて英語ソースにつきブラウザの自動翻訳推奨)
1. ループの中身を”リアルタイムで移調する” ― Cubaseの Slip 機能
KirkpatrickがSteinberg公式インタビューで明かしているのが、「Don’t Start Now」のサビ直前で聴ける印象的なチョップ音の作り方です。
- ループ素材(サンプルやフレーズ)をAudio Partとして配置
- Sample Editorを開き、Slip(スリップ)ツールでループの”中身”だけをずらす(波形の切り出し位置はそのままに、中の音だけを移動させる)
- 短い単位(16分音符〜32分音符程度)でSlipを細かく動かしながら、ループ内の一部分だけを瞬間的に別ピッチに聴かせる
- 気持ちいいと感じたポイントで書き出し、そのままチョップとして楽曲に組み込む
Kirkpatrick自身「これがなければ絶対にできなかった」と語るほど、Cubase固有の機能に強く依存したテクニックです。他のDAWでは同じ効果は出せないため、ここは”Cubaseならでは”の参考として捉えてください。逆に言えば、Cubaseユーザーであれば今日から試せる具体的な手順です。
2. 300GB超のサンプルを”眼で”探す ― MediaBay活用
Kirkpatrickは10年以上かけて集めた300ギガバイト超のサンプル・ループをCubaseのMediaBayで管理しています。曲のアイデアが浮かんだ瞬間に「あの質感の音」を検索・試聴・ドラッグで即配置できる状態を常に維持しているとのこと。
DTMerが真似するなら、以下のような運用が現実的です。
- サンプルにジャンル・質感(例:lofi, bright, dark, vintage)のタグを日頃から付けておく
- MediaBayの評価(レーティング)機能で「よく使う」素材を五段階で分類しておく
- プロジェクトを跨いで使う共通フォルダを1つ作り、そこだけは常にMediaBayのスキャン対象に含めておく
「アイデアが浮かんでから探し始める」のではなく「探す手間をゼロにしておく」というのが、Kirkpatrickの制作速度を支えている土台です。
3. AutoTuneは”時短ツール”として使う
KirkpatrickはAntares公式インタビューで、Auto-Tuneを「音程を”直す”ためではなく、セッションを速く進めるための道具」と位置づけています。
Dua Lipa「Pretty Please」では、作曲当日にShure SM7でソファに座って歌ったスケッチボーカルに、リアルタイムでAuto-Tune(EFXモード)をかけただけの状態がそのまま完成トラックに使われたそうです。
再現する際のポイント:
- ボーカルチェーンの一番手前(録音前)にAuto-Tuneを挿し、リアルタイムモードでモニタリングしながら歌ってもらう
- Retune Speedを速めに設定し、”直っている”ことがわかるくらいはっきりかける(ナチュラルな補正ではなく、あえて効果として聴かせる)
- 気に入ったテイクはそのまま採用し、後から録り直さない
「アーティストのスケジュールが限られている中で、その場で完成に近いテイクを確保する」という制作上の必然から生まれた使い方であり、宅録・弾き語り系DTMerが”歌い直しの手間を減らす”目的にも応用できます。
4. ドラムのアイデア出しはXOで完結させる
ビート作りの初速を上げるツールとして、XLN Audio XO(ドラムサンプル・シーケンサー)も彼の制作動画で頻繁に登場します。手持ちのワンショットサンプルをXOに読み込ませ、内蔵のグルーヴテンプレートに当てはめるだけで叩き台のビートを数分で作り、そこから肉付けしていくという使い方です。
公式情報
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